販売管理においては、在庫の効率的な管理が成功の鍵を握ります。特に、在庫管理の基本である「先入れ先出し(FIFO)」の原則は、商品の品質保持から顧客満足度の向上に至るまで、多くのメリットをもたらします。
しかし、ある程度の時間と手間を要する作業であり、効率化は必須です。
この記事では、先入れ先出しのメリット・デメリット、先入れ先出しが上手くいかない理由を挙げ、それを解消するための効率化ポイントをご紹介します。
先入れ先出し(FIFO: First In First Out)とは
先入れ先出し(FIFO: First In First Out)とは、物流や倉庫管理などで利用される管理手法の一つで、名前の通り最初に入庫した商品を最初に出荷する方法です。
先入れ先出しは在庫管理の基本ですが、特に食品業界(卸売業、小売業)や医薬品業界など、商品の鮮度や賞味期限が重要な業界で広く採用されています。
先入れ後出し(LIFO: Last In First Out)
反対の手法として、先入れ後出し(LIFO: Last In, First Out)があります。これは最後に入庫した商品から出荷していく、つまり新しく入った商品が一番先に出荷する方法です。コストの時間変動に対応しやすく、細かな入荷日のチェックも不要のため、作業効率が上がるというメリットがあります。
先入れ先出しのメリット
先入れ先出しは、販売管理の効率性を大幅に高めるための重要な手法です。
ここでは4つのメリットをご紹介します。
- 商品の品質保持
- 在庫数の把握
- 保管場所の整頓
- 顧客満足度の向上
メリット① 商品の品質保持
先入れ先出しでは古い在庫を最初に出荷するため、長期滞留による品質の劣化や廃棄を最小限に抑えることができます。特に食品や薬品など販売期限の厳守が求められる商品では、先入れ先出しの徹底は商品の安全保証、廃棄ロス防止にも繋がります。
メリット② 在庫数の把握
先入れ先出しのルールを適切に運用すると、商品の流れを一定に保つことができます。そのため、どの商品がどの時点でどれくらいの数値になるか予想でき、在庫数を把握しやすくなります。
効果的な在庫管理は、業務の効率化や適切な補充計画の立案にも役立ちます。
メリット③ 保管場所の整頓
在庫が先入れ先出しのルールに従って配置されると、保管場所が整然と保たれ、商品を探す時間を短縮できます。ミスが起こりにくくなり、ピッキングや棚卸が楽になるために迅速な出荷が期待できます。
メリット④ 顧客満足度の向上
前述の通り、先入れ先出しが徹底されていれば、商品の品質保持と、倉庫の整頓による出荷準備時間の短縮が可能です。品質を保った商品を迅速に提供することで、顧客の信頼と満足度向上に繋がります。
先入れ先出しのデメリット
先入れ先出しには多くのメリットがありますが、以下のデメリットも伴います。
- 管理データの増加
- 作業工数の増加
デメリット① 管理データの増加
先入れ先出しの管理には、商品番号、入荷日、製造日、賞味期限や使用期限、出荷日など多くの詳細なデータが必要です。これにより、データベースで大量の情報を管理しなければならず、時間とリソースが求められます。
デメリット② 作業工数の増加
正確な先入れ先出しを実現するためには、商品を適切な位置に配置し、それを追跡するための記録を行う必要があります。その結果、商品の入庫、配置、検索、出荷にかかる時間が増えるため、現場の方に負担がかかります。
先入れ先出しが上手くいかない理由
先入れ先出しを実施しているけれど、「ミスが多い」「あまりにも時間がかかりすぎる」という場合は、以下の理由が考えられます。
- 商品の状態が一目で分からない
- 入れ替え作業が頻繁にある
- 従業員によって作業方法が異なる
理由① 商品の状態が一目で分からない
先入れ先出しでは、商品が入荷した順番を管理します。しかし、外見上の違いが少ない商品の場合、どの商品が最初に入庫されたかを正確に識別するのが難しくなることも。これによって作業に遅れが出たり、ミスが起きたりする可能性が高くなります。
理由② 入替作業が頻繁にある
在庫数が多い、また在庫の回転が速い場合は、頻繁な入れ替え作業が必要になります。このようなあわただしい状況では、先入れ先出しの実施は難しくなります。
理由③ 従業員によって作業方法が異なる
先入れ先出しでは、作業手順の統一が不可欠です。従業員が個々の解釈で作業を行うと、入荷・出荷順の認識に齟齬が生まれたり、確認に余計な時間をかけたりして、先入れ先出しの実行に支障をきたしてしまいます。全員が同じ作業手順を遵守することが重要です。
先入れ先出しを効率化するポイント
先入れ先出しは在庫管理の基本ルールではありますが、前述の通り工数が多く大変な作業です。「どうにも上手くいかない」「もっと効率的に作業をしたい」とお悩みの方に、5つの効率化ポイントをご紹介します。
- 社内ルールを明確化、徹底する
- 管理者が抜き打ちチェックを行う
- 商品状態を明確にする
- 商品の配置方法を工夫する
- 棚の商品保管数を見直す
ポイント① 社内ルールを明確化、徹底する
先入れ先出しを実践する上では、社内ルールの明確化・徹底が欠かせません。ルールが曖昧では、従業員がそれぞれ自分の判断で行動し、結果として作業に一貫性がなくなり、ミスや混乱が生じる可能性があります。ルールが明確であれば、従業員は迷うことなく効率的に作業を進めることができます。
社内ルールを明確にし、それを全員が守ることで、在庫管理の一貫性が保たれ、作業の標準化が進むのです。
ポイント② 管理者が抜き打ちチェックを行う
ルールが明確化されていても、経験の有無や気の緩みなどによって、従業員がそれをうまく守れていないことがあります。そこで有効なのが、管理者による定期的な抜き打ちチェックです。
従業員がルールを守っているか、商品の管理状態が適切であるかを確認することで、不適切な状況や問題を早期に発見し、改善できます。
ポイント③ 商品状態を明確にする
商品の状態を明確にすることは、先入れ先出しを上手く運用するための第一歩です。社内ルールが徹底され、入荷・出荷順を守って保管されていても、「パッと見」で商品の状態が分からないと作業がスムーズに進みません。
シールやタグなどを使って、製造日や賞味期限、バーコード番号など、商品を特定する情報を一目で把握できるようにしておくと、在庫の混在を防ぎ、作業効率が高まります。
また、保管場所で3S(整理・整頓・清掃)を徹底し、「どの商品が、どこに、どれくらいあるのか」が一目で分かる状態にしておくことも重要です。
ポイント④ 商品の配置方法を工夫する
商品の出し入れをスムーズにするために、商品の配置方法を工夫するのも一手です。古い入荷商品を手前に置くことで取り出しを楽にできますし、入荷日やロットごとに場所を分けることで、商品の状態を把握しやすくなります。
また、商品がどこにあるかを明確にするロケーション管理も効果的です。
ポイント⑤ 棚の商品保管数を見直す
在庫数が多いと、入替作業やデータ管理の手間が増えて作業が煩雑になります。適正在庫を把握し、必要最低限の在庫数に抑えることで、整理整頓が容易になり、商品の取り出しや管理が迅速かつ効率的に行えます。
まとめ
在庫管理の基本ルールである先入れ先出しの実施は、商品の品質保持、在庫数の把握、保管場所の整頓、顧客満足度の向上と、様々なメリットがあります。しかし、その効果を引き出すには適切な運用が重要です。先入れ先出しにお悩みを抱えている方は、現在の作業体制を見直し、より効率的で正確な先入れ先出しを目指しましょう。
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