ロケーション管理とは、商品が倉庫内のどこにあるか、つまり「商品の住所」を体系的に管理することを言います。流動的に変化する倉庫内の在庫情報。効果的なロケーション管理は、ピッキングの時間短縮や、作業の質の標準化に繋がります。
本記事では、ロケーション管理の方法や使えるツールについて、それぞれの特徴やメリット・デメリットを説明しています。ツールの導入以外にも、ロケーション管理の課題を解決する方法も挙げていますので、ぜひ最後までご覧ください。
ロケーション管理とは
ロケーションとは、主に「列・連・段」などで表記される「商品の保管場所を表す、倉庫内の住所(商品の住所)」のことです。ロケーション管理は、この商品の住所、「どこに、何があるか」を体系的に管理することを指します。
場所を探すとき、住所を知っているのと知らないのではかなり効率が違いますよね。商品の住所を正しく把握していれば、つまりロケーション管理を正しく行えば、商品を探し回るという「ムダ」がなくなって出庫作業の時間を短縮できます。
また、新人さんでも商品がどこにあるのか、どこに置けばいいのか分かるため、経験年数によらず作業の質が均一になるのもロケーション管理の大きなメリットです。
ロケーションの置き方
ロケーションの置き方は、倉庫内の在庫管理を効率的に行うための重要な要素です。ここでは、主に「ラック」と「平置き」の方法について詳しく説明します。
ラック
商品をラック(棚)に入れて管理する方法です。
ラックで管理する場合は、棚の段ごとにコードを付けて管理します。
ラックを使用することで縦方向のスペースを有効活用でき、移動距離も少なくなるためピッキングの効率化に繋がります。
平置き
商品を床に置いて管理する方法です。
倉庫内をゾーンやエリアに分け、それぞれにコードを付けて管理します。
平置きはサイズに柔軟に対応でき、大きな商品、重量のある製品などに適しています。
3つのロケーション管理方法!メリット・デメリットは?
業務効率化の第一歩とも言えるロケーション管理ですが、適切な管理方法は倉庫によって異なります。
ここでは、主な3つのロケーション管理方法についてご説明します。それぞれの運用方法、メリット・デメリット、適した倉庫について理解し、自社の最適な運用方法を考えてみてください。
固定ロケーション:「多量少品種」の商品倉庫にオススメ!
固定ロケーションは、各商品に決まった保管場所を割り当てて管理する方法です。「商品AはA-01-02、商品BはB-02-03…」と、商品ごとに固定の保管場所を決め、その場所に必ず保管します。
メリット
場所が覚えやすい
各商品が常に同じ場所に配置されるため、どこに何があるのか覚えやすいのが最大のメリットです。ただし、商品の種類が多い倉庫では覚える量も増えるので、苦労します。
欠品リスクが低くなる
固定ロケーションでは、商品の在庫状況が一目で確認できます。
そのため、目視で在庫管理を行う倉庫(在庫管理システムを導入していない倉庫など)では、欠品リスクを低下させる手段として有効です。
デメリット
デッドスペースができやすい
全ての商品の置く位置が固定されているため、例え空きスペースがあっても、他の商品を置くことができません。そのため、デッドスペースが生まれる要因になります。
商品の変更に対応しづらい
商品入替や商品の大きな数量変化などがあると、ロケーションのレイアウト変更が必要になり、現場の作業負担が大きくなります。
固定ロケーションは、以下のような商品を扱う倉庫に向いています。
- 多量少品種
- 商品の入替が少なく、年間の数量を予測できる定番商品
(レイアウトの見直しがあまり必要ない)
さらに「目視で在庫確認を行っている」倉庫にも固定ロケーションが適しています。
フリーロケーション:「少量多品種」の商品倉庫にオススメ!
フリーロケーションは、特定の位置に商品を保管するのではなく、空いている場所に自由に商品を保管していく管理方法です。ロケーションが「自由」なので、保管場所は流動的に変化します。
メリット
保管効率が良い
フリーロケーションは商品の保管位置に制約がなく、空いている場所に商品を置けるため、デッドスペースが生まれません。倉庫内のすべての空間を有効活用できるため、固定ロケーションと比べて効率的な保管が可能です。
デメリット
システム導入がほぼ必須
フリーロケーションでは商品の位置が常に変動するため、各商品とその保管場所を正確に記録する必要があります。
しかし、これを紙やExcelなどアナログな手法で行うには非常に手間と負担が伴います。正確性の観点からも、倉庫管理システムや在庫管理システムを導入していない倉庫では難しい運用方法と言えます。
システムについては、次の章でご説明します。
フリーロケーションは、以下のような商品を扱う倉庫に向いています。
- 少量多品種
- 入替の頻度が高い
- 生産量の変動で在庫の増減が読みにくい
- 日付管理やロット管理が必要
特にアパレル、食品業界にはフリーロケーションが適しています。
ダブルトランザクション:「多量多品種」の商品倉庫にオススメ!
ダブルトランザクション(ダブルロケーション)は、固定ロケーションとフリーロケーションを組み合わせた管理方法です。
倉庫内を「ピッキングエリア」と「ストックエリア」の2つのエリアに分け、主にピッキングエリアは固定ロケーション、ストックエリアはフリーロケーションで管理します。
ピッキングエリアで商品をピッキングし、在庫が少なくなったらストックエリアから補充するという運用方法です。
メリット
作業効率/保管効率の両立
固定ロケーションによる「ピッキングの作業効率アップ」、そしてフリーロケーションの「商品の保管効率アップ」という両方のメリットが得られます。
デメリット
ストックエリアからピッキングエリアへの補充作業が必要
ダブルトランザクションでは、ストックエリアからピッキングエリアへの補充作業が必要です。補充作業が加わってもなお、ダブルトランザクションの方が効率的である場合にのみ使用しましょう。
また、この補充が適切に行われないと、「ピッキング中に在庫が無いことに気づき、作業を中断しストックエリアに商品を探しに行く」という無駄な時間が生まれるため、補充ルールの徹底が求められます。
ダブルトランザクションは、以下のような商品を扱う倉庫が向いています。
- 多量少品種
- 出庫頻度が高い
- 商品の移動が困難でない(重くない、大きくない)
3つロケーション管理方法を紹介しましたが、これらは決して絶対的なものではありません。
「ダブルトランザクションのストックエリアを、一部フリーロケーションで運用する」「基本的には固定ロケーションだけれど、スペースに保管しきれない在庫は別の場所に置いても良い」など、自社の倉庫に合わせた柔軟な運用も可能です。
ただし、いずれの場合も倉庫内で運用ルールを徹底させることが重要です。
ロケーション管理の課題と対策
ロケーション管理は倉庫運営の効率化に不可欠ですが、運用にはいくつかの課題が伴います。ここでは、主な課題とその対策についてご紹介します。
課題①不良在庫の増加による保管効率の低下
売れ残りや破損品などの不良在庫が多いと、有効な保管スペースを占有し、全体の保管効率が低下します。
対策
一時保管エリアの設置
不良在庫が多い場合は、不良在庫専用のエリアを設け、通常の在庫と分けて保管することで管理がしやすくなります。他の在庫管理業務にも影響を与えません。
定期的な在庫評価と処分
定期的に在庫を評価し、不良在庫を迅速に処分することで、スペースを有効に活用できます。
課題②不適切なロケーション設定
商品の特性や取り出し頻度を考慮せずにロケーションを設定すると、作業効率が低下します。
対策
出庫頻度に応じた配置
出庫頻度が高い商品は出庫口付近に、頻度が低いものは出庫口から離れた位置に配置することで、ピッキング時の移動距離を短縮できます。
また、合わせて出庫されることが多い商品があれば、それらはセットで近くに置きましょう。
似た商品は離す
似た商品が近くにあると、ピッキングエラーのリスクが高くなります。間違いやすい商品は離れた場所に配置し、ミスを防止しましょう。
課題③ロケーションの可視化不足
ロケーションの可視化不足とは、倉庫内の在庫がどこにあるのかを即座に把握できない状態を指します。作業員がロケーションをすぐに特定できないと、ピッキングや補充作業に時間がかかります。
対策
明確なラベル付け
各ロケーションに詳細なラベル(棚番号、行番号、セクション番号など)を付けたり、色分けするなどして視認性を高めるのが有効です。
誰でも分かるロケーション設定
倉庫内のどの場所を指しているのか、誰でもすぐに分かるようなロケーションのコードを設定しましょう。ロケーションは基本的に「列・連・段」で設定しますが、さらに分かりやすくするために「建物」や「エリア」などの区分を設けることも有効です。
ルールの徹底
ロケーション設定のルールを倉庫内で決め、それを徹底させることが重要です。「どの作業者でも理解できる」ロケーション設定にすることで、作業効率は格段にアップします。ルールはマニュアル化し、少なくとも同じ倉庫内で確実に共有できるようにしておきましょう。
ロケーション管理のツール
ここでは、ロケーションのデータを正しく管理しておくためのツールをご紹介します。
ツールによって効果や費用は様々なので、費用対効果を考慮して選びましょう。
紙・ホワイトボード・Excel
固定ロケーションでの管理には、紙やホワイトボード、Excelが使われています。入出庫のたびに作業者がロケーションを記録し、集計してデータを管理します。
メリット
- 低コスト:初期費用がほとんどかかりません。
- 操作性が高い:誰でも簡単に使えます。
- テンプレートが豊富:ネット上で簡単に見つかります。
Excelは多くの企業で導入されており、使用経験のある人が多いため、導入のハードルが低いです。
デメリット
- 生産性の低下:手作業での記録・集計に時間がかかります。
- ヒューマンエラーの発生: 手入力によるミスが起こりやすいです。
- リアルタイムな情報共有が難しい:最新の情報をすぐに共有できません。
- フリーロケーションは不可能: 商品の移動が多い場合、管理が困難です。
商品が動くたびにロケーションを記録するのは手間がかかり、生産性が下がります。ロケーション管理をしてもあまり効率化できていないということも…。また、ヒューマンエラーや情報更新の遅れも問題となります。
倉庫管理システム・在庫管理システム
倉庫管理システムや在庫管理システムでは、バーコードやRFIDを用いて自動で商品とロケーションを管理できます。商品が入庫してロケーションを決めたら、スマートデバイス(タブレットやハンディターミナル)で商品とロケーションのコードをスキャンするだけで、データが自動的にシステムに転送・集計されます。
メリット
- 作業効率アップ:手作業の負担が減り、作業が迅速になります。
- 正確性アップ: ヒューマンエラーが減少します。
- リアルタイムな情報共有が可能:最新情報を即時に共有できます。
システムを導入すると、作業者は商品とロケーションのコードを読み取るだけで済みます。データは自動で転送されるため、アナログ管理のデメリットである「効率・正確性・リアルタイム性」の問題が解決します。
デメリット
- 導入費用が高額:初期投資が必要です。
- システム選定に苦労する:選択肢が多く、自社に適したシステムを選ぶのに時間がかかります。
紙やExcelといったアナログ手法と比べ、システム導入にはどうしても高額な費用が掛かります。
もちろんシステムによって作業が効率化できれば、導入費用以上の効果回収は可能です。しかし、千差万別のシステムの中から自社にふさわしいシステムを選定するには、それなりの時間がかかります。
倉庫管理システムと在庫管理システムの違い
ちなみに、ロケーション管理を可能にするシステムには「倉庫管理システム」と「在庫管理システム」がありますが、それぞれ目的が異なります。簡単にチェックしておきましょう。
倉庫管理システム
倉庫内全般の業務の効率化をはかるのが目的です。
在庫管理の機能もありますが、あくまで倉庫内の在庫のみを管理します。
在庫管理システム
在庫適正量を管理し、利益を最大化することが目的です。
こちらは、店舗などの倉庫外の在庫も管理します。
以下の記事で詳しく説明しています。
ロケーション管理には、絶対にシステム化が必要というわけではありません。
ただし、システムはロケーション管理を行うにあたって、効率と正確性を両立させてくれるツールです。フリーロケーションを行う場合や、「記録作業に手間がかかる」「在庫情報が合わない」という課題を解消したい場合は、システム導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
ロケーション管理を行うことで、ピッキング作業の効率化や作業の質の標準化が実現します。ロケーション管理の方法には、「固定ロケーション」「フリーロケーション」「ダブルトランザクション(ダブルロケーション)」の3種類があります。自社の倉庫の特徴に適した方法を選びましょう。
ロケーション管理は、システム導入などのツールを活用するだけでなく、配置やロケーション設定の工夫によっても効率化が可能です。システム導入は効果が高い反面、費用がかかり導入のハードルが高くなる場合もあります。システム導入に関するお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。
ロケーション管理を適切に行うことで、倉庫運営の効率化と標準化が実現します。自社の倉庫に最適な方法を選び、システム導入や配置の工夫を活用して、さらなる効率化を図りましょう。