実在庫数と理論在庫数はなぜずれるのか?原因と対策を徹底解説!

実在庫数と理論在庫数にはなぜ棚卸差異が生じるのか? 予防対策やシステムでの管理を徹底解説!

在庫管理は難しいと言われますが、中でも

実在庫と理論在庫が合わない!

というお悩みをよく耳にします。この差異に悩まされている担当者も多いのではないでしょうか。そこで今回は実在庫、理論在庫というキーワードを今一度理解し、実在庫数と理論在庫数の差異による影響や予防策をご紹介いたします。

目次

実在庫と理論在庫

本記事のテーマとなる「実在庫」「理論在庫」、まずはこの二つの単語の意味を再確認していきましょう。

実在庫とは?

実在庫とは、文字通り実際にそこにある在庫のことを指します。倉庫や店舗内で管理されている在庫をその場で目視で確認した実際の在庫数ということです。今倉庫に何個在庫があるのかという点は、企業の利益を直接左右する要因でもあるため、この把握は非常に重要なものとなります。

理論在庫とは?

理論在庫とは、売上報告書や伝票などの各種帳簿やシステム上の記録で表される在庫数のことを指します。実際に今倉庫に何個あるのかは関係なく、仕入数や出荷数を考慮すると理論的に今この個数の在庫が倉庫にあるはずだ!と数を追跡した値です。

実在庫数と理論在庫数がずれる?

理論在庫数と実在庫数が一致しているということは、その時間、その場所で正確な在庫管理が行われていることになります。しかし、現実には理論在庫数と実在庫数が合わず、在庫差異が生じることが多々あり、ぴったり一致することの方が珍しいほどです。多くの企業がこの在庫差異による損失に悩まされています。なぜ在庫数が合わなくなるのでしょうか?

実在庫数と理論在庫数にずれが生じる5つの原因

実在庫数と理論在庫数にずれが生じる原因はヒューマンエラーによるものが大半を占めます。ここでは在庫差異の原因となる5つの例をご紹介します。

在庫差異が生じる原因
  • 伝票数字の入力ミス、処理漏れ
  • 入出庫時の数え間違い
  • 棚卸のミス(数え間違い、数え漏れ、二重カウント)
  • 在庫管理ルールの徹底不足
  • 伝票処理のタイムラグ

伝票数字の入力ミス、処理漏れ

よくあるのは、伝票に記載された似ている数字を読み間違えて帳簿に記録してしまうミスです。「0と6」「1と7」などの読み違いや、桁数が多くなった場合「0」の数を間違えるミスも多く発生します。

数字の入力ミスや見間違い

特にExcelで帳簿を管理している場合など手入力をする場面が多ければ多いほど、入力ミスが発生し在庫差異の原因となります。また、伝票の処理を担当者が忘れてしまったり、伝票が紛失してしまい処理が漏れてしまったり、というケースも在庫管理の現場では実際に発生しています。

例えば、不良品や仕入先の納期遅延などで発注した数だけ商品が入庫しない場合、帳簿上の数を実際に入庫した数に修正しなければなりません。そこで入庫伝票のマイナス処理を担当者が忘れた場合、在庫にズレが生じます。単純なミスですが、日に数十から数百の伝票処理を手入力で行っていれば当然起こりうることです。単価が安いものであればリカバリできますが高額商品の処理ミスは会計に大きな影響を与えます。

入出庫時の数え間違い

倉庫や店舗では、商品が入出庫する際に伝票の数と実際に入出庫する数が一致しているか検品を行います。この時に数を数え間違えてしまうと在庫差異の原因となります。特に入荷した商品を原料として新たな商品を製造する場合は在庫にズレがある状態のまま、加工・製造が進んでしまう為、完成品の数も合わなくなり、在庫差異の原因の追及がより難しいものとなります。

棚卸のミス(数え間違い、数え漏れ、二重カウント)

棚卸は理論在庫と実在庫にズレが生じていないか確認する上で重要な作業です。在庫差異が既に発生している場合は、棚卸をすることで差異が発生した原因を追及し、帳簿の修正を行う必要があります。しかし、この棚卸作業にも人為的ミスが発生する要素が多く存在しています。

  • 単純に在庫の数を数え間違えてしまうミス
  • 棚の奥にある商品を見逃し数え漏れが発生するミス
  • 一度数えた商品をもう一度数えてしまう二重カウントミス

などが主な例です。棚卸は単純な作業の繰り返しとなる為、集中力が途切れてしまいミスに繋がりやすいのです。棚卸で正確な在庫数が把握できなければ、適正在庫を算出することができず過剰在庫を抱えてしまったり、逆に欠品による機会損失に陥ったりします。

在庫管理ルールの徹底不足

在庫管理のルールは企業ごとに異なり、各社オリジナルのルールが存在します。きちんとマニュアル化されている企業は少なく、長年働く専任担当者から若手担当者へ口頭説明で済まされるケースが多く見受けられます。その結果、在庫に不良があった場合の処理方法や出荷準備が終わった後にキャンセルがあった場合の処理方法など、担当者ごとに対応が異なり帳簿上の在庫数に反映されないことがあります。担当者ごとにマイルールが存在することで在庫差異はどんどん大きくなり深刻な問題となります。

伝票処理のタイムラグ

商品Aを100個入荷し、90個出荷した場合の実在庫は10個です。ただし、担当者がシステム上で伝票処理を行い在庫情報の更新を行うまで、商品Aの理論在庫は100個で帳簿上には存在することになります。

実在庫と理論在庫の差異

このように、商品Aを出荷したことは帳簿上ではリアルタイムで更新されません。担当者は出荷の都度、システムに入力するわけではなく、ある程度、売上伝票がたまってからまとめて記録する方が効率的だからです。

タイムラグが発生している間に商品Aの追加注文が50個来た場合、帳簿上にはまだ在庫が100個ある状態なので、別の担当者は仕入をせずに在庫から商品Aの引当てをしてしまうかもしれません。商品Aの実際の在庫数は10個なので出荷時に在庫が足りず納期遅延が発生します。納期遅延を繰り返せば当然、顧客の信頼を失い最悪の場合取引中止となることもあるでしょう。

実在庫数と理論在庫数にずれがあるとどうなる?

欠品

実在庫数と理論在庫数のずれは、企業に多大なる影響を及ぼします。理論在庫数として記録されている個数をもとに商品の仕入れをしたが、実在庫数は全然違ったとなれば、在庫を持ちすぎる過剰在庫や出荷時の欠品を招きます。過剰在庫を抱えてしまうと、本来現金になるはずの在庫が残り続けてキャッシュフローが悪化します。あるはずの現金が手元にない状態が続くことで、経営の必要資金が回らなくなり、存続の危機さえ起こり得ます。在庫の長期保管で品質に問題が発生する場合もあります。一方で在庫不足は、顧客への納品遅延や欠品を引き起こす可能性があります。これは顧客満足度の低下や信頼性の失墜につながり、最終的には販売機会の損失や売上減少に繋がる恐れがあります。このように、実在庫数と理論在庫数の一致は企業の経営、また顧客との信頼関係に直結する非常に大きなファクターと言えるのです。

実在庫数と理論在庫数のずれをなくす5つの対策

では、実在庫数と理論在庫数を常に一致させ、正確な在庫管理を行うにはどうすれば良いのでしょうか。対策としてすぐに実行できる項目から、システムでの管理までをご紹介します。

在庫差異をなくす対策5選
  • 管理のルールを決め、徹底する
  • 日次棚卸を行う
  • Excelからの脱却
  • 販売管理システムを利用する
  • 販売管理システムと倉庫管理システムの連携を行う

管理のルールを決め、徹底する

すぐ始められる対策として、標準化したルールを策定することが大切です。長期にわたり同一の担当者が管理を行っている場合、作業が属人化してしまいます。複数人で行う場合でも、従業員ごとに独自のやり方で業務を行うことがほとんどです。そこで、担当者間の話し合いにより、標準的なルールを策定・共有する必要があります。計測の方法や順番を明確にし、マニュアルを作成しましょう。そうすることで誰でも同一のクオリティで作業が可能となります。新人でもマニュアルを見ればすぐに業務に対応できるようになるのも利点です。

日次棚卸を行う

次に、差異を減らすために重要なのが日次棚卸の実施です。日次棚卸とは、その日に入出庫で変動した在庫の数量状況をその日のうちに確認することを指します。在庫誤差を早期に発見し、在庫管理を一貫性あるものに維持するための重要な手段です。工数は増えますが、一日の終わりに作業時間を設けておくことで、日々のルーティンとして行うと定着するでしょう。月ごと、半期ごとで行う大規模な棚卸業務と違い、1日の在庫の流動を追うことができるため、より管理が細分化され正確な個数を維持することができます。

Excelからの脱却

Excelでの管理ではどうしても手入力が増え入力ミスを誘発します。また、リアルタイムでの在庫状況の更新が困難であり、遅れた場合には在庫状況のずれが生じます。また作業を簡略化するために設定したExcel関数は複雑化しやすく、設定した本人以外は計算式がずれて合計数が合わなくなったとしても気づくことができません。複雑化した関数式は、時間の経過とともに設定した本人ですら修正が難しくなることでしょう。

販売管理システムを利用する

では販売管理システムを導入して仕入から売上までをシステムで管理するのはどうでしょうか。販売管理システムには在庫管理機能を持ったものもあり、仕入から売上までにかかる手入力の回数を大幅に減らすことができます。ただ販売管理システムが持つ在庫管理機能はあくまでもシステム上の在庫数であり理論在庫です。販売管理システムの在庫数と実在庫数はリアルタイムでは更新されないため、伝票処理のタイムラグや処理自体を忘れてしまう伝票処理漏れによるミスには対応しきれない場合があります。販売管理システムだけで在庫管理も行う場合は、伝票処理のタイミングや不良品の処理方法などルールを定めマニュアル化することが重要です。

販売管理システムと倉庫管理システムの連携を行う

「理論在庫と実在庫」つまり「情報とモノ」を一致させて在庫差異を軽減するためには、販売管理システムと倉庫管理システムを導入すると良いでしょう。販売管理システムで理論在庫を管理し、倉庫管理システムで正確な実在庫を把握する方法です。販売管理システムから入出荷指示を出し、倉庫管理システムでは指示書に従いハンディーターミナルを用いて入出庫を行います。ハンディーターミナルでバーコードを読み取るだけで入出庫した実際の在庫情報がリアルタイムで販売管理システムに反映されます。

誤入力によるミス、入出庫時の数え間違い、伝票処理のタイムラグで発生する在庫差異を削減することができるのです。健全な在庫管理を行う為に、販売管理&倉庫管理システムの導入も検討してみてはいかがでしょうか?

実在庫数を徹底管理して無駄のない在庫管理業務を!

いかがでしたでしょうか。在庫管理業務において、実在庫数と理論在庫数に差異を生じさせないことは非常に重要です。常に実在庫と理論在庫を一致させ、顧客満足度を向上させることで企業としての信頼を獲得しましょう。当社では在庫管理の課題を解決する各種ソリューションをご用意しております。先ほどご紹介した販売管理システムについてのご質問や、在庫管理にまつわるお悩みなど、些細なことでもいつでもお気軽にお問い合わせください。

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