現在、ECサイト開設の容易化や、フリマサイト普及による個人間取引の増加に伴い、物流業界では取引量が増加傾向にあります。国土交通省がまとめている「令和3年度 宅配便取扱実績について」では、2017~2021年にかけて宅配便の取扱増加量はおよそ10%ほどとされています。人手不足が叫ばれる中での取扱量増加に伴い、作業者の負担増加に伴うミスの発生は喫緊の課題です。
この記事では、倉庫業務の検品作業にスポットを当て、業務を正確かつ効率的に行える手助けができるよう、起こり得るミスやその対策について解説していきます。
検品作業とは?
検品作業は、入出荷時に商品の品質や数量の確認を行う作業のことを指します。具体的には、商品が注文通りのものであるか、破損や汚れがないか、そして正しい数量が揃っているかを確認する作業のことです。検品には入荷時に行う「入荷検品」と出荷時に行う「出荷検品」があります。
入荷検品作業
入荷検品は、商品や材料などの自社へ入荷した際に行う検品です。
基本的に次の手順で進めます。
- 商品と納品書を照らし合わせ、品番や数量をチェックする
- 商品に問題(破損・汚損など)がないかをチェックする
- 受領書を渡す
商品は梱包されているため、ものによっては開封して中身を確認する必要があります。
出荷検品作業
出荷検品は、出荷先へ商品を納品する際に行う検品です。 基本的に次の手順で進めます。
- 出荷指示書をもとに品番や数量を確認し商品をピッキング
- ピッキングした商品の仕様や品質に問題がないかをチェック
- 完了した商品を梱包し、出荷先に間違いがないかをチェック
注文した商品と違うものを届けてしまったり、誤った出荷先に納品してしまったりすると、顧客とのトラブルや信用問題にもつながりかねません。そのため、慎重かつ正確に行う必要があります。
検品ミスが発生すると、顧客満足度の低下や返品・交換の手間、さらには再発送コストなど、企業にとって多くの損失が発生する可能性があります。利益の最大化を図るためにも、検品ミスはなくしていく必要があります。
なぜ検品ミスが起きるのか?
ミスの原因は商品の取り違えや品番の見落としなどのヒューマンエラーであることが多いです。ここでは、検品作業におけるミスの原因を解説していきます。
人間によるアナログ作業
検品作業は従来、人の目と手によって行われてきました。しかし、人間によるアナログ作業では、品数や種類の増加、集中力の低下や疲労に伴って、単純な見落としや思い込みが出てきてしまい、ミスが発生しやすくなってしまいます。
人員の経験不足
検品作業は「誰にでもできる単純な仕事」というイメージが先行してしまい、経験不足のスタッフが配置されがちです。検品作業の流れや確認ポイントを理解していないためにミスが生じる可能性が高まります。反対に、ベテランゆえに慣れや慢心による思い込みが発生することもあります。
確認項目の多さ
確認項目が多く存在している場合、その多さが検品ミスを引き起こす要因となります。できるだけ確認項目を減らせるように、必要十分な最低限の項目まで絞り込む必要があります。
検品作業でミスを減らすための対策方法
先ほどの章では、検品作業のよくあるミスと原因をお伝えしました。
ここでは検品ミスを減らすための対策について解説していきます。
作業のマニュアル化
スタッフごとに作業内容の差が生じないよう、マニュアルを作成し作業を平準化させることが有用です。
作業に慣れるにつれ、一部手順の省略や、自己流で対応するスタッフが出てくる可能性があるため、「必ず作成したマニュアル通りに作業を進める」という意識を浸透、順守させることが重要です。
マニュアル外の対応が必要になる際は、評価のばらつきを抑える点でも上司に確認するようルールを設けましょう。 また、定期的に見直しを行い、内容を適宜修正、共有・周知していくことも大切です。
情報共有の徹底
作業マニュアルや倉庫内レイアウトが変更になった際は早急に情報を共有することが必要です。変更点などの情報共有をしっかりと行うことができれば、商品の取り違いや作業手順の誤りを防ぐことができます。
保管場所の工夫
見間違いによるミスを防ぐためにも、似たような商品同士を近くに置かないといった対策もあります。色や形状が似ている商品には、わかりやすい目印をつけておくと判別が容易になります。
また、商品保管場所の整理整頓をきちんと行うことで、ピッキングの際の手間を軽減し、作業効率や集中力の低下を防ぐことができます。
ロケーション管理について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
品番割付の最適化
品番はアルファベットや数字で記載されることがほとんどのため、同じ文字や数字が連続したり、中1文字だけ違ったりすると見間違ってしまう可能性が高いです。短く識別しやすいことが前提ですが、どうしても長くなってしまう場合は、-や/などで区切る等、視認性を上げる工夫が求められます。
間違いやすい例:「CV-15AA9265DA」
工夫例:「CV-15AA-9265-DA」
また、色違いの製品などは同じ品番で管理されることも多いので、色ごとに品番をつけることで取り違いを防ぐことができます。
人材募集と人材育成
検品作業を適切に行うためには、経験を持った人材、適性のある人材の確保が必要です。
経験がなくとも、「細かな作業を手際よくコツコツと進められる」「集中力を切らさずに丁寧に作業を進められる」の素養をもった人材の確保も検品作業の正確性においては有用でしょう。
アウトソーシングサービスの利用
コスト負担はかかってきますが、検品作業をアウトソーシングする方法もあります。
作業マニュアルの作成や人材の採用・育成の労力を考えると、企業規模によっては検討の選択肢に入ってきます。ノウハウのある専門企業に委託することで、品質の安定した検品作業が保証されます。
ITを使った検品ミス対策
検品作業において、人間のミスを予防するのには限界があります。
それを助けてくれるのが、システムやITツールです。ここでは、ITツールを使った検品ミス対策について解説していきます。
WMSとハンディターミナルの導入
倉庫管理システム(WMS: Warehouse Management System)を導入することで、検品作業の効率化やミスの削減が期待できます。ハンディターミナル(HT)を用いて入荷時に商品登録することで、WMS上で管理でき、出荷時にはその商品をスキャンするだけで正確な検品作業を実現できます。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
RFID(Radio Frequency Identification)の活用
RIFDは、対象範囲内にある複数の専用タグの一括読み取り・書き込みが可能です。通信距離が長く、障害物があっても読み取れるため、一つの箱に複数の商品が格納されていても、対象の棚にリーダライタをかざすだけで箱の中の電子タグをすべて読み込むことができます。箱を開けてコードを1つずつ読み取る際に生じやすかった読み忘れを防ぐことができます。
コードリーダの活用
コンベアラインで荷物を搬送している企業では、インラインで自動読み取りが可能なコードリーダを導入することで、コンベアに商品を載せる際のコードの読み取り忘れを防ぐことができます。ただし機器によっては印字のかすれやにじみ、荷姿などで読み取りエラーが発生することがあるので、その際は人による対応が必要になります。
画像認証 AI-OCRの活用
画像認証AI-OCRでは、事前に登録した画像と照らし合わせることで、バーコードがついていない商品や不良品の判別、賞味期限やコードの読み取りが可能になります。
まとめ
ここまで検品ミスの原因と対策について解説してきました。
検品作業は単純なように見えて実は奥が深く、非常に重要なプロセスです。検品作業の効率や正確性を向上させることで、企業全体の業務効率だけでなく、顧客満足度の上昇につながるのです。
検品ミス対策は高価なITを導入する方法だけではなく、ここで解説したもののようにお金をかけずにすぐに実践できることもあるのです。まずは、自社でできることから実践し、必要に応じてITを活用するなど段階を踏んでいくことが、正確かつ効率的な検品の近道になるでしょう。
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