「検品レス」と聞いてピンとこない方も多いのではないでしょうか。「検品レス」は倉庫管理における効率化手法の一つです。従来、各品物を1つ1つ検品する作業には膨大な時間と労力が必要でした。しかし、検品レスを実現することで、その時間と労力を大幅に削減でき、倉庫管理の業務効率化を図ることができます。この記事では、その有用性と実現方法について解説し、中心的な役割を果たす倉庫管理システムの利用についても詳しく説明します。
検品レスとは?
検品レスとは、その文字通り「検品をしないこと」を指しています。まず「検品レス」の定義について正確に理解する必要があります。
検品レスの定義
「検品レス」というと出荷側、入荷側の双方で検品が不要になると勘違いされることがあります。実際は流通経路の中で一度も検品を行わないというわけではありません。出荷側が正確に検品を行うことで、入荷側の検品を簡略化または抜き打ちで一部の検品を行うに留まることを指します。そのため、出荷側の正確な検品による出荷精度の向上が「検品レス」の大前提となります。加えて、出荷する商品の情報をあらかじめ入荷側に通知することで「検品レス」が実現します。
サプライチェーンにおける検品の実態
商品は「メーカー」「卸」「小売」を経由して消費者の手に届く流れが一般的です。これら商品の原材料調達から消費に至るまでの一連の流れをサプライチェーンと呼び、自社だけでなく複数の企業間で情報の共有を行うことが業務効率化のカギとなります。
しかし実際は、出荷側と入荷側の双方で行っている「検品」による業務負荷が課題となっています。メーカー側が出荷段階で正確な出荷検品を行っているにも関わらず、入荷側の卸でも入荷検品を行っていることが多く、卸と小売間でも同様の検品業務が発生します。つまり流通全体で「検品」に二重のコストと時間をかけているのです。本来であれば、出荷側が正確に検品を行い出荷しているのであれば、入荷側の検品は簡略化できるはずです。
バーコードによる検品が普及したことにより、すべての商品バーコードをスキャンする全数検品も業務負荷に拍車をかけています。在庫管理を効率化するために導入したはずのシステムも本来の目的から離れ、全数スキャンすることが目的にすり替わってしまったのです。
ASNと流通BMS
検品レスを実現するためには、ASN(事前出荷通知)と流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)が重要になります。
ASN(事前出荷通知)
ASNとはAdvanced Shipping Noticeの略で「事前出荷通知」「事前出荷情報」の意味ですが、入荷側から見れば事前に送られてくる「入庫予定データ」となります。事前通知される内容は主に、納品日、届先、商品情報、数量、賞味期限、パレット番号などです。入荷時にはこのASNを読み取るだけで、どのような荷物であるか詳細を知ることができるため、一つ一つ検品する必要がなくなります。
流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)
物流連携を有する「メーカー」「卸」「小売」間でASNデータをやり取りするためには、同一規格のデータ送受信環境の整備が必要になります。ここで「流通BMS」が鍵となります。流通BSMとは、経済産業省が中心となり業界関連団体と協議を重ね作られた新しい電子データ交換方式です。通信方式とメッセージフォーマットを標準化したことにより、事業間でバラバラであったシステムを業界全体で統一することが可能になりました。
検品レス実現のメリット
では検品レス実現によるメリットには具体的にどのようなものがあるのか、3つご紹介します。
- 作業時間の短縮
- コストの抑制
- 人的作業負担の軽減
メリット①作業時間の短縮
検品レスの最も直接的なメリットは、作業時間の短縮にあります。従来の検品作業は、商品の数量や品質を確認する手間が必要であり、多くの時間を要していました。しかし、検品レスによってこの作業が削減されることで、商品の入庫から出庫までのフローが迅速になります。特に大量の商品を取り扱う大規模な倉庫や、高い出入庫頻度がある場合には、この時間短縮の効果は非常に大きくなります。
メリット②コストの抑制
検品作業の省略や自動化により、それに伴うコストも大きく抑制されます。
- 検品に関わる労働コスト
- エラーやミスに起因する再検品や返品のコスト
- 遅延に伴うコスト
これらが削減されることで、全体的な運用コストが低減します。さらに、効率的な在庫管理による過剰在庫や品切れによるコストも抑えることができます。
メリット③人的作業負担の軽減
検品レスによる作業の簡素化や自動化は、スタッフの作業負担を大きく軽減します。手動での細かな確認作業やヒューマンエラーのリスクから解放されることで、スタッフのストレスや疲労が軽減され、より重要な業務に集中することが可能となります。また、労働集約的な作業を減少させることで、人材の確保や教育のコスト・時間も削減することが期待されます。
検品レスを実現するには?
このように倉庫管理において、検品レスを実現することでメリットがたくさんあります。では、これらのメリットを享受するために必要な要素とは何でしょうか。
- 信頼性の高いサプライヤー
- 正確な注文と在庫管理
- 先進的な技術の導入
信頼性の高いサプライヤー
検品レスを実現するためには、サプライヤーが送付する商品が確実に規定通りの品質と数量であることが求められます。これは長期的な関係と信頼を基に構築されるもので、サプライヤーのパフォーマンスや実績に基づいて評価されます。しかし、人間がこれを確認するのは手間がかかり、かつミスを生じる可能性があります。
正確な注文と在庫管理
正確な注文数と矛盾しない製品が届いているか確認するために、厳密な注文および在庫管理システムが必要です。また、注文と在庫の情報に一貫性を持たせる必要があります。これは従業員が維持するには煩雑で、一定のエラー率が必然的に生じます。
先進的な技術の導入
RFIDやバーコードスキャナーなどの技術を使用することで、検品作業を自動化し、時間と労力を大幅に節約することができます。しかし、これらの技術を倉庫作業に統合し、適切に運用するには専門知識と一定のシステムが必要です。
検品レス実現に必須?倉庫管理システムの重要性
これらの要素を適切に管理し、検品レスを効率的に行っていくためには、統合的なソリューションが必要です。倉庫管理システムはこのような要件を満たす強力なツールです。
倉庫管理システムとは
倉庫管理システム(Warehouse Management System:WMS)は、倉庫の作業フロープロセスを効率化、自動化し、最適化するためのソフトウェアシステムです。これには在庫管理、ピッキング、パッキング、出荷、商品の置場管理など、すべての倉庫の稼働に関連する作業が含まれます。サプライヤーからの製品情報をデータベースに効率的に統合し、在庫管理をリアルタイムで行うことが可能です。また、RFIDやバーコードスキャナーなどの自動化技術をシステムに統合することで、検品作業を完全に自動化することができます。そして、すべての作業を一貫してトラッキングし、エラーをすばやく特定・修正します。
倉庫管理システムの実践的なメリット
倉庫管理システムを導入することで得られる、具体的な効果を3つに分けてご紹介します。
- ヒューマンエラーの軽減と作業精度の向上
- 入庫作業の標準化と効率化
- 運用コストの削減
メリット①ヒューマンエラーの軽減と作業精度の向上
倉庫管理システムは、一連の作業フロー(ピッキング、パッキング、出荷など)を自動化することで、ヒューマンエラーを効果的に軽減します。さらに、倉庫管理システムは明確な作業指示を提供することで、どの商品を、いつ、どこから取り出し、どこへ配送するべきかといった管理を容易にします。加えて、バーコードやRFIDスキャンの使用により、正確な商品が適切な場所から選択され、正しい宛先へ送られることを確認できます。これらの機能は誤出荷を防ぎ、信頼性と顧客満足度の向上に貢献します。
メリット②入庫作業の標準化と効率化
倉庫管理システムは、商品が倉庫に入庫する際のフロー(レシービング、検査、登録、保管など)を標準化し、効率化する能力を持っています。自動化のすすめにより、これらの作業は一貫性を持ち、効率的に行われます。また、特定の規準(売れ筋順、商品サイズなど)に基づき、商品を適切な位置に配置することで、倉庫内の動きを最適化し、スペース使用効率も向上させます。
メリット③運用コストの削減
適時に提供される在庫データと予測分析により、倉庫管理システムは正確な在庫レベルの維持をサポートし、過剰在庫や在庫切れを防ぎます。これにより在庫管理コストの削減が可能となります。また、一連の作業プロセス(ピッキング、パッキング、出荷など)の効率化により、運用コストを最小化することが可能です。さらに、倉庫スタッフの作業パフォーマンスの評価と適切な人員配置により、労働コストの削減も期待できます。
検品レスのための倉庫管理システムの選び方
このように倉庫管理システムで複雑な管理作業を簡略化し、多くのメリットを生み出すことができます。まずは自社に合った倉庫管理システムを導入するために重要なことを明確化しましょう。
必要な機能と要件
第一に、ニーズに合った機能を備えていることが必須です。そのためにまずは自社のビジネスプロセスを理解し、何が必要なのかを明確にすることが大切です。
- 商品のトラッキング
- 在庫管理
- 発送スケジューリング
- レポート作成
- データ分析
- 商品の種類
- 取引量
- 販売チャネルの多様性
- ピーク時の取引量
例えば、商品のトラッキング、在庫管理、発送スケジューリング、レポート作成やデータ分析などの機能が必要かどうかを見極めます。また、より詳細な要件としては、商品の種類、取引量、販売チャネルの多様性、ピーク時の取引量などに対応できるかも重要です。これらの機能要件を明確にし、それに合ったシステムを選ぶことで、倉庫管理システムは業務効率化やコスト削減といった成果を最大化します。また、昨今では導入形態も重要な指標となります。クラウドが良いのかオンプレミスのほうがマッチしているのか、自社の環境と規模に合わせた選択が必要です。それぞれのメリットデメリットを理解したうえで導入形態を判断しましょう。
導入にあたっての注意点
倉庫管理システムを導入する際には、業務フローとシステムの相互理解が重要です。まず、システムが提供する機能が自社のビジネスプロセスとどの程度適合するのか評価することが必要です。すべての機能が100%マッチするわけではないため、どこにギャップが存在し、それをどのように埋めるかを検討することも必要になります。また、導入費用だけでなくランニングコストも考慮に入れるべきです。保守管理費用やサポート体制を確認しましょう。そして最後に、システムが将来的なビジネス拡大に対応可能かどうかも見極めるべきです。業務のスケールアップが予想される場合、それに対処できる十分な機能がシステムに備わっているか確認することも大切です。
倉庫管理システムで検品レスを実現しよう!
いかがでしたでしょうか。倉庫管理における検品作業の削減は、企業に大きな効益をもたらします。ただ単にシステム導入が面倒だからといって、一つ一つの検品を手動で行うのではなく、導入コストと長期的な効率化によるコスト削減を見極めて、効率的な倉庫管理を実行することが大切です。検品レス化による迅速かつ正確な入出庫作業で、コスト削減と顧客満足度向上を目指しましょう。
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